年間90勝への道

 大相撲の本場所は、昭和33(1958)年より一年間に6回開かれるようになった。1場所15日間だから、一年で90日。(本表へ) (15連勝以上表へ)

 場所は1箇月おきに開催され、番附もその都度発行されるから、「1年」という区切りはそう意味のあるものではない。しかし、「年間最多勝」というのが秋(9月)場所や九州(11月)場所に取り沙汰されるように、暦と同じように「1年」を意識しないわけではない。
 「年間最多勝」(1〜11月までに、一番勝利した力士)や「連勝記録」はほかの項に譲るとして、本表では、「初場所初日からの連勝記録」を扱ってみたい。理論上は、初場所初日から九州場所千秋楽まで90連勝が可能である。が、それは不可能と言っても良いだろう。
 ここでは、各年度初場所初日からの最多連勝者を掲げる。やはり、その場所優勝する横綱や大関が多いが、意外な力士も入っている。その力士一年間の成績も見てみたいところだが、それはまたの機会としたい。
 あくまでも初場所初日からの連勝者であり、以降これを越える連勝があっても表には入れていない。

 なお、年間6場所になったのは昭和33年からであるが、「初場所」は昭和28年から行なわれている(3月場所が設置され、「春場所」と呼ばれるようになった。それまでの春場所を「初場所」に改称)。
 本表では参考記録として、昭和28年〜32年までも掲載する。

 「成績」の◎は優勝、○は優勝同点(決定戦負け)。勝敗は、全勝の止まった場所までの各場所のもの。「備考」最初の力士名は連勝を止めた相手。続いて、その場所中に敗れた主な相手([ ]内は何日目を表わす)。優勝争いから脱落したり、負けの数が多い場合は全員を示していない。

初場所初日からの最多連勝者
年度 地位 シコ名 連勝 成績 備考
年間60日
昭和28 前13 常ノ山 6 10-5 前 8清水川(12-3) 後半4-4ながら技能賞
昭和29 大関 吉葉山 15 15-0◎
0-0,15

3月:休場により連勝ストップ
昭和30 大関 三根山 6 9-6 関脇松登 翌日も敗れ、13日目からも3連敗
昭和31 横綱 鏡里 11 14-1◎ 大関若ノ花 前10鶴ケ嶺と決定戦
年間75日
昭和32 横綱 千代の山 15 15-0◎
10-5

3月:前 5時津山(12-3) 初日に敗れ、連勝ストップ
年間90日
昭和33 大関 若乃花 9 13-2◎ 横綱千代の山 [12]大関朝汐
昭和34 横綱 若乃花 12 14-1◎ 関脇時津山
昭和35 横綱 栃錦 12 14-1◎ 大関琴ケ濱 ※前13大鵬は11連勝(小結柏戸に敗)
昭和36 大関 柏戸 9 13-2◎ 大関若羽黒 [14]横綱朝潮
昭和37 前11 房錦 6 8-7 前 5出羽錦 その後連敗・3連敗・連敗
昭和38 横綱 大鵬 12 14-1◎ 関脇豊山(10連勝・13-2)
昭和39 横綱 大鵬 33 15-0◎
15-0◎
10-5
1月:前13清國が14連勝
3月:横綱柏戸が14連勝
5月:前 2前田川(3-12) 34連勝でストップ
昭和40 大関 佐田の山 6 13-2◎ 大関栃光 [14]横綱大鵬
昭和41 前11 海乃山 10 12-3 前 2清國・大関豊山と連敗 横綱柏戸が9連勝(14-1◎)
昭和42 横綱 大鵬 19 15-0◎
13-2
1月:横綱佐田の山が13連勝
3月:前 3淺瀬川 34連勝でストップ
昭和43 横綱 佐田の山 7 13-2◎ 大関琴櫻 [14]大関玉乃島
昭和44 横綱 大鵬 16 15-0◎
3-2,10

3月:前 1戸田 45連勝でストップ<世紀の大誤審>
昭和45 大関 北の富士 5 13-2◎ 前 3福の花 [15]玉乃島(決定戦は勝ち)
大関 玉乃島 13-2○ 関脇前乃山 [8]小結栃東
昭和46 横綱 玉の海 14 14-1○ 横綱大鵬 前場所も14連勝、千秋楽に負け
昭和47 前 7 金剛 7 8-7 関脇長谷川 残りは3連敗・4連敗で、後半は1-7
昭和48 大関 琴櫻 11 14-1◎ 前 3福の花
昭和49 関脇 北の湖 10 14-1◎ 小結魁傑
昭和50 横綱 北の湖 11 12-3◎ 前 6三重ノ海 [13]関脇若三杉 [15]横綱輪島
昭和51 小結 高見山 5 9-6 前 3長谷川 [8]前 1金城 [10]大関貴ノ花
昭和52 横綱 北の湖 11 12-3 関脇若三杉 [14]大関貴ノ花 [15]横綱輪島(13-2◎)
昭和53 横綱 北の湖 16 15-0◎
13-2◎

3月:前 3琴風 [15]大関若三杉(決定戦)
昭和54 横綱 若乃花 11 11-4 大関旭國 以降全敗
昭和55 横綱 三重ノ海 16 15-0◎
1-4,10

3月:前 3千代の富士・3連敗で休場(24連勝でストップ)
昭和56 関脇 千代の富士 14 14-1◎ 横綱北の湖(決定戦は勝ち)15連勝でストップ
昭和57 横綱 千代の富士 8 12-3 小結佐田の海 [12]隆の里 [15]北の湖(13-2◎)
昭和58 横綱 千代の富士 10 12-3 関脇朝潮(14-1○) [12]関脇北天佑 [14]大関琴風(14-1◎)
昭和59 横綱 千代の富士 6 12-3 大関朝潮 [9]大関北天佑 [15]隆の里(13-2◎)
横綱 隆の里 13-2◎ 前 3逆鉾 [8]大関朝潮
昭和60 横綱 千代の富士 19 15-0◎
11-4

3月:前 3鳳凰 22連勝でストップ
昭和61 横綱 千代の富士 9 13-2◎ 関脇旭富士 [13]大関北尾
昭和62 横綱 双羽黒 8 12-3○ 前 4益荒雄 [10]関脇小錦 [13]大関大乃国
昭和63 大関 旭富士 13 14-1◎ 横綱北勝海
平成元 横綱 北勝海 14 14-1◎ 大関旭富士(14-1○) 決定戦では勝ち
平成 2 横綱 千代の富士 13 14-1◎ 大関小錦
平成 3 関脇 琴錦 8 11-4 横綱大乃国 ここから4連敗
平成 4 前10 鬼雷砲 4 6-9 前 5三杉里 3連敗・5連敗・敗
前11 貴ノ浪 10-5 前 7舞の海 [8]前 3武蔵丸
平成 5 大関 7 13-2◎ 前 3若花田 [11]前 6栃乃和歌
関脇 貴花田 11-4 前 6栃乃和歌 [10]前 9琴別府
平成 6 大関 貴ノ花 13 14-1◎ 横綱
平成 7 横綱 7 12-3 前 1貴闘力 [13]大関武蔵丸(13-2○) [15]横綱貴乃花(13-2◎)
平成 8 横綱 貴乃花 13 14-1○ 関脇魁皇 大関貴ノ浪(14-1◎)と決定戦
平成 9 大関 若乃花 14 14-1◎ 大関武蔵丸
平成10 大関 貴ノ浪 4 10-5 前 3琴の若 [7]前 4旭鷲山
大関 武蔵丸 12-3◎ 小結琴錦 [11]大関若乃花 [14]大関貴ノ浪
平成11 横綱 若乃花 12 13-2○ 関脇武双山 [15]関脇千代大海(13-2◎) 決定戦も負け
平成12 横綱 8 11-4 小結雅山 [12]前 4栃乃洋 [14]大関千代大海
平成13 横綱 貴乃花 14 14-1◎ 横綱武蔵丸(14-1○) 決定戦は勝ち
平成14 大関 栃東 11 13-2◎ 関脇琴光喜 [13]大関魁皇
平成15 大関 朝青龍 8 14-1◎ 前 5海鵬
平成16 横綱 朝青龍 35 15-0◎
15-0◎
13-2◎

3月:11日目まで全勝4人
5月:前 1北勝力(13-2○) [11]関脇旭天鵬 決定戦で雪辱し逆転優勝
平成17 横綱 朝青龍 27 15-0◎
14-1◎
2年連続全勝スタートは初
3月:大関栃東 連勝は止まったが、3連覇。そのまま年間制覇
平成18 前11 北勝力 9 12-3 前14時津(12-3) [13]関脇白鵬(13-2) [14]大関栃東(14-1◎) 全員優勝争い
平成19 前11 玉春日 7 9-6 前 8豪風 [9]前 9豊ノ島(12-3) ここから6連敗、最後は連勝
平成20 横綱 白鵬 9 14-1◎ 関脇安馬 1敗で並走していた朝青龍を下し、3連覇
平成21 横綱 朝青龍 14 14-1◎ 横綱白鵬 本割りでは敗れたが、決定戦で雪辱し優勝
平成22 横綱 白鵬 6 12-3 関脇把瑠都 [12]大関日馬富士 [13]大関魁皇 この場所14日目より63連勝
平成23 横綱 白鵬 10 14-1◎ 関脇稀勢の里 八百長騒動で3月場所はなかった
平成24 大関 把瑠都 14 14-1◎ 横綱白鵬 初優勝は千秋楽に敗れて全勝ならず
平成25 横綱 日馬富士 17 15-0◎
9-6

3月:前 1髙安 [4]前 2千代大龍 [8]前 4豊ノ島 [13]大関鶴竜 [14]大関稀勢の里 [15]横綱白鵬
平成26 横綱 白鵬 14 14-1◎ 大関鶴竜(14-1○) 本割りでは敗れたが、決定戦で雪辱し優勝
平成27 横綱 白鵬 27 15-0◎
14-1◎

3月:関脇照ノ富士(13-2)
平成28 大関 琴奨菊 12 14-1◎ 前 7豊ノ島(12-3) ライバル豊ノ島に全勝を止められたが、日本出身力士10年ぶりの優勝
平成29 大関 稀勢の里 8 14-1◎ 大関琴奨菊 前年登場の琴奨菊に止められるも悲願の初優勝、場所後横綱昇進
平成30 横綱 鶴竜 10 11-4 関脇玉鷲 [12]前 5遠藤[13]関脇御嶽海[14]大関髙安 まさかの4連敗で優勝は平幕の栃ノ心
平成31 横綱 白鵬 10 10-4-1 小結御嶽海(8-4-3) [12]関脇玉鷲(13-2◎)[13]関脇貴景勝 まさかの3連敗・休場で優勝は玉鷲
令和2 前 4 正代 6 13-2 大関豪栄道 [14]前17德勝龍(14-1◎) 千秋楽まで優勝を争ったが、前日敗れた德勝龍が幕尻優勝
疫病蔓延のため、翌場所は無観客、5月は中止、7月以降はすべて東京開催
令和3 前 1 大栄翔 8 13-2◎ 前 2宝富士 [11]前 3阿武咲 横綱は2名とも休場も出場した三役全員を倒して初優勝
令和4 関脇 御嶽海 9 13-2◎ 前 4北勝富士 [12]前 5阿武咲 千秋楽照ノ富士の3連覇を阻止して関脇で3回目の優勝
令和5 前 3 阿炎 5 8-7 大関貴景勝(12-3◎)など 先場所の優勝から連覇の勢いだったが、千秋楽に勝ち越し
前10 碧山 8-7 前8阿武咲など 優勝争いには絡めず
令和6 前 7 朝乃山 7 9-3-3 前10玉鷲など 敗れた相撲で足を傷め4日間休場。再出場して勝ち越した

 上の表より、一場所の日数以上、つまり十六連勝以上の力士を集めてみた。
 “戦後三大横綱”(昭和63年まで)が皆入っているが、貴乃花は入っていない。近代では連勝も難しくなったが、ついに名を連ねる力士が登場した。

初場所初日ヨリ超十五連勝力士碑
年度 シコ名 連勝 備考
平成16 朝青龍 35 いつの間にやら平成に入って最多連勝記録(当時)となり、この表も40年ぶりに更新された。
昭和39 大鵬 33 初場所からとしては、ここを開いた当初は第1位。何十年も動かなかった時計が進んだ!?
平成17 朝青龍 27 2年連続の登場。連勝が止まった後も結構勝ち進み、なんと年間84勝を挙げた。
平成27 白鵬 27 史上最多33回目の優勝は全勝。翌場所も優勝して一人旅は続く。
昭和42 大鵬 19 第1位から3年後。前年からの連勝は、前と同じく34で止まった。
昭和60 千代の富士 19 昭和では最後、次の記録は19年後を待たねばならない。ちなみに5月も13連勝し、新国技館開幕28連勝を記録。
平成25 日馬富士 17 新横綱が9勝に終わった翌場所は全勝。しかしその翌場所も9勝という忙しい横綱。
昭和44 大鵬 16 前年からの連勝が45で止まったのは周知のとおり。
昭和53 北の湖 16 大鵬に続いてこの表に名を連ねる。
昭和55 三重ノ海 16 横綱在位は短かったが、昇進前後はひじょうに強かった。
制作・著作:紅葉橋律乃介(momijibasi@yahoo.co.jp) その他入口へ 銀河大角力協会へ行く
inserted by FC2 system